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三大秘境に挑む-2-

どうも筆が進まぬので困った。文章を練るというのは大変だ。

 

始発の時点ですでに予定より遅れて発車したイオンタウン日向発上椎葉行きの宮崎交通バス。

おそらく日野ポンチョが投入されている最長の路線であろう。これより長距離/時間の継投で日野ポンチョが使用されているのをご存知の方はぜひご教示いただきたい。

 

上椎葉行バスは、運転手の予告通り最初の交差点で本来のルートと思しき方角から外れ、上椎葉と反対、すなわち海の方角へ走り出した。

 

ほどなくして、バスは私を乗せたまま車庫へ突っ込み、営業所の前へ頭から停車した。

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運転手は慌ただしく運賃箱の一部を取り外すと、中身をもって営業所の中へ消えていった。

バスについては詳しくないのでわからないが、運賃の回収を行っているのだろう。

別に椎葉村まで往復しても運賃箱があふれることはまずないはず(失礼)だが、経理上のあれこれがあるのだろうか。

 

少しして、運転手がまた慌ただしく戻ってきて、すみませんねと言いながらバスをすごい勢いで後退させていく。誘導もいないが大丈夫か。

ポンチョはリヤガラスが非常に小さいのだが、そんなこと知ったこっちゃねえとばかりにぐいぐい下がっていく。思わず自分も後方を確認してしまう。車庫内のバスの間にその身をねじ込ませ切り返しを行ったポンチョは、10分を超えた遅れを取り戻さんと猛然と日向市内を駆けだした。

 

実のところ、日曜日ということもあり自分と同じような「乗りバス」な人が乗ってくるかと思っていたがそんなことはなく、趣味以外の実用目的で乗ってくる人もなく、バスは日向市駅を過ぎ、日向市の中心市街をあとにして一路山へ突き進んでゆく。

 

塩見川を左に見ながら、バスは国道327号を行く。国道はこの先で塩見川から離れ、次は耳川を伴侶とし、このまま椎葉村へ続いていくのだ。

道中はよく整備され、椎葉村までのほとんどは広い幅を持った2車線の快走路である。防災への取り組みであろうか、残された狭隘区間も最近は急ピッチでバイパス整備が行われているようだ*1

 

誰も乗ってこないこともあり、バスは50-60km/hで巡航を続けており、乗っていて非常に爽快感がある…

のはいいのだが正直かなり揺れる。

ポンチョはどことなく乗り心地の良い印象を抱いていたのだが、それはただ単に町中をちょこちょこと走っていたからであって、高速巡航となればそこらのバス並みにはエンジンは唸るし跳ねたり沈んだりもするわけだ。

 

 ポンチョの乗り心地に関する評価を改めつつも、乗客は私一人なので空間は広々、快適である。子供が振り回す虫カゴの中の虫のような扱いを強いられていることを除けば。

 

時速50kmで飛ばす点Pになって1時間半、バスは九州山地の山中、諸塚村の中心地塚原へ到着、ここで10分休憩となる。途中で2名ばかり乗ってきたが、30分ほど乗ったところでまた降りてしまい、どうやら乗り通すのは私一人のようだ。終点まではまだ1時間あるが一応椎葉村の隣村まではきている。

休憩と言ってもバス車庫があるだけで、周囲に観光客目当ての店はない。

仕方ないのでバス車内で転がっているとバスは発車。振り落とされぬよう居住まいを正す。

 

ここからも快適なバイパス道路が椎葉村まで続いているのであるが、バス路線はここで道を離れ旧道経由となる。

 

旧道になった途端、道があからさまに悪くなる。ポンチョでも通るのがやっとのようだ。バイパス開通まではそれなりに交通量もあったろうに離合箇所も少なく、現役当時は*2さぞドライバー泣かせの道であったことだろう。少なくとも自分はここを運転するくらいなら南池袋PAから本線合流をするほうが心安らかでいられるだろう。

 

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右手に岩壁、左手に千尋の谷を見ながらバスはか細い道を往く。道路には苔も落ち葉もなく、一定以上の交通量があることを示している。事実何度か地元車と思しき軽自動車とご対面したわけであるが、互いになれたもので、阿吽の呼吸ですれ違っていく。すごい。

しかし、椎葉村まであと僅かに迫ったその時、カーブを抜けると1台のSUVがこんにちはしているではないか。

離合箇所は後方100mに過ぎ去っており、ここはSUVが下がるのが妥当に思えた(前方には離合箇所が見えていたのだ)。

が、そんな場の空気をあざ笑う新たな刺客のエントリー、大型ダンプ2台だ。

運転手、後部座席まで聞こえるほどの盛大な舌打ち。シフトレバーをRへ。

岩壁と絶壁迫るカーブに後進で突っ込んでゆく。

チョット待ってほしい、運転している方も怖いだろうが乗っている方はもっと怖いのだ。路線バスにはシートベルトなる素敵な安全装備は無いのだ、いや運転席にはある、客席にだけないのだ。万が一手を滑らせバスが滑落したら運転手は助かる見込みがあるが私はもれなく死ぬ。

 

生死をかけた電撃イライラ棒をすること100m、バスは離合場所に到達し100万円の代わりに人命2つを手に入れた。やはり車は前に進んでこその乗り物である。

 

到着直前に危うい場面があったものの、それ以外は飽きもせず、苦痛も感じず、終点、上椎葉バス停に到着。ポンチョであっても空いていれば存外快適なものであった。

時刻は12時ちょうど。定刻より4分延着である。

 

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運賃表がPONと乗ってCHOこっと行くどころでない愉快なものとなっているがこれも旅の醍醐味であろう。片道乗車で1日乗車券(1800円)の元が取れてしまうというものこの路線がいかに長距離路線であるかを物語る。

なお、この路線はnimocaが使える。こんな山中でもICカード乗車券が使えるのだ。21世紀は僕らの手の中に。ICカード使用で自分のカード利用履歴に椎葉の文字を残したい衝動にも駆られたが、それだと1日乗車券1800円の支払いが無駄になるばかりでなく加えて2480円の運賃も支払いしめて4280円の損となるからやめておいた。

 

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上椎葉バス停より椎葉市街。誰もいない… 平家の落武者伝説もあるという村は静まり返っていた。ここは川沿いの高台でせせらぎの音もここまでは届かず広告ノボリが風に煽られ軒先にかち合う音が響くのみである。

 

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帰りの日向市行き最終バスはなんと50分後の発車である。椎葉村に公共交通機関で日帰り旅行をするという人は需要予測の外側にいるということか。行き先がイオンタウンになる前の「ロックタウン」になっているあたり、このバス停に対する宮崎交通の熱意が伝わってくるというものだ。

 

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ここ上椎葉は村営バスも発着しているようだが、ご覧のとおり1日1本である。左側の欄は到着時刻か。村営バスでこの本郷とやらに行った暁には果たしていかようにして戻ってくるのか。まったく恐ろしい片道バスもあったものである。

なお、発車時刻である12:15まで待ってみたがバスは来なかった。日曜は運休であろうか、それともこの村営バスは想像上の存在に過ぎずその場合アナタが云々…

 

ともあれ、貴重な椎葉村滞在50分のうち15分を来ないバスを待つという生産性あふれる行為に費やしてしまったので残りの時間で歩きまわってみねばなるまい。

 

次回椎葉村を駆け足で巡って戻ります。

 

 

 

*1:何年か前に大水害があり、土砂崩れやらなにやらで大変なことになったらしい。乗車時も治山、治水工事をいたるところでやっていた

*2:今も現役だが