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台湾到着・空港にて

時計の針を1時間戻す。時刻は15時(現地時間)前、定刻に台湾は桃園国際空港に到着である。

4時間のフライトが終わり、降機の準備で機内はにわかに騒がしくなる。ここで私は日本での準備に不備があり予想外のつけを支払わされることになる。

 今度の旅は、空港でクレームタグを握りしめながら流れ行くカバンを虚ろな目で見つめ、カバンが何かの間違いで全く見当違いな便に載せられアンカレッジへ持ち去られたのではと気をもむのが嫌だとばかり機内持ち込み可能なカバンにきめていた。

それは全く結構なのだが荷造りの際に恐ろしいことに私は人格が分裂してしまい、日本は寒いが台湾は暑かろう、服はすっかり脱いでカバンにしまうのだという自分と、旅先で日用品だ充電ケーブルだ、そんなものでカネを使うのが一番つまらないのだからアレもコレも持っていこうとナイフランプカバンに詰め込んだ自分が出現してしまったのだ。

結果脱いだ上着がカバンに収まらず四苦八苦しているうちに他の乗客はすっかり降りてしまい、ほとんど最後の方にいびつに膨らんだカバンを抱えながら降りることになってしまった。

 

ボーディングブリッジを埋め尽くす人たち。彼らもまたこれから始まる台湾旅行に心を踊らせているのだろうか。あるいは長旅を終え間もなく到着する我が家に思いを馳せているのであろうか。

やがて一列の行列が見え、人々はそこへ吸い込まれていく。もちろん自分も律儀に列の一員となる。入国審査か?

 

「Singaporeへのトランジットのお客様はこちらにお並び下さーい!」

 

そういえばこの便は台北経由のシンガポール行きだと空港の案内にも表示があったな。なるほど皆最終目的地はシンガポールなのか。みな入国カードを書いてないのもうなずける。

そう、実は入国カードを書かないまま降機してしまったのである。

機内で入国カードをしたため空港についたら然るべき官吏にうやうやしくカードを差し出すのが作法だというのはさすがの私でも知っている。

しかしながら機内ではカードが配られなかった。配っていたけれども気が付かなかっただけかもしれないが兎にも角にも私には入国カードが無い。どうする?『地球の歩き方』には機内で書けなかったときの対処法は書いてあるのか。『地球の歩き方』読んだこと無いけれど。

 

まあ入国カードがないだけで御用になったり、制限エリアでの生活を余儀なくされたりはしないであろう。それに国際空港というのは異文化交流の中心地だ。言葉が読めないとか文化風俗が違うとか、注意力散漫な海外旅行初心者がうっかりしていたとかで入国カードを書き漏らした人間にも親切に対応してくれるに違いない。

果たしてそれは入国審査の列の前にきちんと用意されていた。フール・プルーフなる偉大な設計思想を生み出した人間に感謝である。

何分何事も初めてづくしであるから、「機内で入国カードをもらえなかったけど、空港にカードがあったので問題なかった」ということをいうだけでも900字を費やして語らねばならぬ一大イベントに化けてしまう。

 

入国審査の列は予想していたよりずっと早いスピードで進む。「入境」と書かれた看板に対し、入国は中国語だと入境と表記するのか、あるいは「国」と書くことすらなにかと波風が立ちかねないこの地の微妙な政治的境遇が生み出した苦肉の表現かと思案を巡らせているうちに順番が来てしまった。

この入国審査官は大層愛想が良く、無言でパスポートを受け取るとこれまた無言で写真機を指差し、そののち指紋採取の機械をまたまた無言で指差す。スキャナが正常に採取を終えたと見るや、手早く旅券に入境の捺印をしこちらを見ることもなく返して寄越した。

別に邪険に扱われた気はせず、殿様扱いをしてほしかったわけでもないが、「斉藤寝具、斉藤寝具」と口をモゴモゴさせ問答の準備に余念がなかっただけにあまりに何も聞かれないので拍子抜けしてしまった。いっそ国家転覆を図る凶悪な工作員のフリでもして、それでもかの管理官が無関心を装えたか観てみたい衝動すら湧いてきたがそういう余計なことをして空港運営を乱すのはやめておいた。

 

到着ロビーに出た私は宇宙人がはじめて地球を眺めるが如く周囲を興味に満ちた眼差しで以て見回した。うむ、どこかで見たことがあるような合理的で、清潔で、大人数の交通を効率良くさばくことを念頭においていることがよく分かる。生物の収斂進化と同様、国は違えど空港はやはり日本とそう変わらないようだ。

喉が渇いたので自販機に目をやると、日本の飲料が当たり前のように売っている。日本語表記もそのままで売られているものもある。が、せっかくここまで来たのだから現地の飲み物を買ってやろうじゃないか。

両替したばかりで効果の種類がいまいちつかめず悪戦苦闘しながらも購入。「はじめてのおつかい」ミッションクリアだ。

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黒松沙士」、なんて読むのかわからないけれどこの見た目からして炭酸飲料で、コーラのような味がするに違いない。これだけで「なんとなくコーラっぽいな」っていうイメージを抱かせるに至るまでにコカ・コーラ社は一体どれほどの広告費を投じたのだろうか。それだけの広告費を投じて作ったイメージをニューコークでぶっ壊しにかかったり、なんだかんだリカバリーしてしまったりするコカ・コーラ社は無敵である。

話がそれたがこの黒松沙士味はルートビアに近いもので大変美味であるので台湾に行ったからには必ず飲むべきである。幸いフリークエントサービスを実施していて台湾中のあらゆる自販機、売店その他でどこでも購入できるので便利である。

 

喉を潤したところで次は空港を出ます。どうも筆が遅くてかなわない。